{"created":"2023-06-20T14:05:32.445020+00:00","id":40541,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"1044dd37-d370-4ee0-a995-480ea7cee546"},"_deposit":{"created_by":14,"id":"40541","owners":[14],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"40541"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:soka.repo.nii.ac.jp:00040541","sets":["3474:7465:7873"]},"author_link":["93750","93751"],"item_3_biblio_info_6":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2021-03-31","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographicIssueNumber":"73","bibliographicPageEnd":"335","bibliographicPageStart":"319","bibliographic_titles":[{"bibliographic_title":"教育学論集"}]}]},"item_3_description_4":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":" 本稿のタイトルに興味ある読者のために概要を示しておく。原発と核兵器の結びつ\nきの理解をどう深めればよいか、という理科教育の立ち位置からの問がある。筆者が\n担当する理科の科目で、核の物理、核兵器開発と現代までの経緯を説明した後、受講\n者が核抑止という考え方に対する自分の意見を整理するという実践を行った。教育仮\n説「受講者が肯定論をはじめに考え語ることで、感想や子どもたちに語りたいことが\n“現実味” を帯び、理想論にならないようになる。」は成り立ち得ると判断された。\n“現実味” については、受講者は平和とはどういう状態なのかとの問を立て、テクス\nトの分析から、「核抑止による世界的安定」、「真の平和とは何なのか」の構成概念が\n抽出できた。また、受講者が核抑止や平和の問題をより身近なものと認識するという\n結果も得られた。\n 筆者は、教職大学院所属の現職のときに、本来なら理科教育に専念すべきところで\nあったが、2011年3 月の福島第1 原子力発電所事故(以後、福島原発事故)の後は、\n学生・院生たちとともに、福島や都内ホットスポットの現地調査、土壌放射能の分\n析、放射線教育指導計画の作成などに多くの時間を消費した。しかし、リタイヤに\nよってできなくなった。\n 本稿は、リタイヤ後に取り組んでいる、通信教育部の理科概論などの受講者を対象\nにした放射線教育の第3 報告である。第1 報告では、原子炉の4 つの困難(プルトニ\nウム、最終処分場、放射能汚染、廃炉)を受講者が自らの論理(ロジック)をもとに\n困難度の順に並べ替える課題の教育的有効性について述べた1)。第2 報告では、原発\n事故の風化を防ぐという教育を意識した活動的学習を行った2)。一方、これまで踏み\n込めていなかった、理科教育の立ち位置から原発と核兵器の結びつきの理解をどう深\nめればよいかという教育上の問があった。一つの方向として、理科教育として実施す\nるのは筆者には守備範囲外であるとも思われたが、核抑止の世界の現実をどうとらえ\n学校の平和教育にどう結び付けていくか、というテーマにそった活動的学習の実施が\n浮上した。\n 本稿では、その実施内容と結果を報告する。本実践のような核抑止を一つのテーマ\nにする教育実践の背後には、様々な分野における反核・平和に関連する先行研究事例\nがある。したがって、核抑止の考え方やその取り上げ方にそって整理して示す必要が\nあると思われる。ここでは、試行的に、\n 1 物理学会(筆者が長年にわたり所属していた)誌に出たレビュー的論考から\n 2 平和教育と平和学研究の中から\n 3 大学での平和学講座の実例から\n 4 学校などの理科・社会科教育実践として\n 5 心理学分野の平和に関連する調査から\nの5 つの範疇に分け、本実践の背後にある先行研究事例をいくつかを挙げたあと、本\n実践の根拠となり参考となる事柄を探ることにした。\n まず、物理学会誌に出たレビュー的論考からになるが、山崎正勝によって概要次の\nように紹介されている3)。1957年に、「ラッセル・アインシュタイン宣言」の呼びか\nけによりパグウォッシュ会議がカナダで発足している。日本からは、湯川秀樹、朝永\n振一郎らが参加した。ビキニ環礁事件などの後、1963年の部分的核実験禁止条約が成\n立したが、同会議では、レオ・シラードが「核との共存」を主張するなど、核抑止論\nに基づく核による平和論が蔓延するようになった。これに対し、湯川や朝永らは 核\n抑止論の矛盾を突き厳しく批判した。\n 平和教育と平和学研究の中では、まず、学会誌に載ったものではないが、岡本三男\nが、1964年に国際平和研究学会(International Peace Research Association)が設立\nされた時代状況を語っている4)。平和概念が消極的平和と積極的平和の二つに分か\nれ、当時若きヨハン・ガルトゥングが「積極的平和」(貧困、抑圧、差別など構造的\n暴力のない状態)と「消極的平和」(戦争がないことを定義した言い方)という概念\nを練り上げた経緯を語っている。関連して、澤村雅史は概要次のように述べている5)。\n平和学の父とされるヨハン・ガルトゥングの「積極的平和」に沿って自らの平和観の\nあり方を検証することは、学生たちにとって「平和」とは何かについて考える糸口に\nなり、平和教育に携わる者にとって常に欠かすことができないと。さらに、津村は、\n「・・核廃絶を夢物語と嗤う人たちもいますが、核抑止論もまた信者にとってのみ有\n効な神話である・・」と、David P. Barash(宗藤尚三 訳)6)を引用して示す。\n 中山雅司は、論考のなかで核抑止に関連する事項について、概要次のように述べて\nいる7)。核兵器禁止条約は核兵器すべてを禁止するが(開発、実験、生産、保有、貯\n蔵、使用、使用の威嚇)、ここで核兵器による威嚇の禁止すなわち核抑止力を否定し\nていることは非常に重要であるとし、核傘下国で唯一オランダが過去の核兵器禁止条\n約交渉会議にオブザーバーとして参加し、保有国の思いを伝えるという大切な役割を\n果たしたと結論づける。そして、核兵器禁止条約と核兵器不拡散に関する条約である\nNPT(核兵器の現存は認める)は両立し得ると指摘する。そして、「核時代に終止符を\n打つために戦うべき相手は、核兵器でも保有国でも核開発国でもありません。真に\n対決し克服すべきは、自己の欲望のために相手の殲滅も辞さないという“核兵器を容\n認する思想” です」との創価大学創立者の言葉を引用し、世界平和への方途を示唆す\nる。\n 大学での平和学講座の実例では、次のようなものがある8)。安斎育郎は、平和の名\nにおいて何を扱おうとするのかを定める際に、「平和の定義」が必要になるとして、\nガルトゥングの「暴力の対置概念としての平和」という広義の平和概念をベースに幅\n広い内容の授業を組み立てた。全30回の講義のなかに、核抑止力政策の歴史的変遷\n( 8 回)、核抑止力政策の問題点( 9 回)が入っている。講義の中で、2006年あたりま\nでと考えられる日本の情勢などに関するアンケート調査を実施していて、「(北朝鮮の\n核実験が)日本の核武装を求める世論を強めるか」との問いに、150人ほどの受講者\nのうち56%が「そうは思わない」との回答をしたことにふれ、被爆国の日本人は核兵\n器の非人道性をよく知っているため、日本は核武装の道を選ぶはずがないという思い\nが働いているのではないかと記している。\n 学校などの理科・社会科教育実践としては、福島原発事故前後のものとして次のよ\nうな事例があった。山本勝治は、2005年度から6 年間、学校設定科目「世界史特講」\nにおいて、高校3 年生を対象に時事問題の授業を行った9)。それは概要次のようで\nあった。まず、時事問題を扱うことで複数の立場や視点から課題を整理し論点をまと\nめる論理的思考力を高めていく。そして、4 つの学習目標の1 つに「理想論だけでな\nく現状の矛盾点等も踏まえて具体的な意見を自分なりにまとめることができる」を設\n定した。ある生徒は核兵器廃止の立場であったが、授業で自分とは異なる核抑止論\n(が出ていて)その論拠もふまえて反論していた、など成果が述べられている。山崎\n敏昭は、福島第一原発事故をきっかけに、所属校の「総合的学習の時間」( 3 単位)\nにおける「理科研究」として高校3 年生を対象に原発や放射能を中心にゼミナール形\n式で授業を行った(履修者46名)10)。生徒のグループによる探究・発表・知の共有と\nいう形をとった(テーマは5 つあり、原子力発電の仕組み、原発事故の内容、放射性\n物質の放出と人体・農作物への影響など)。物理の授業と違い結論が出ていないもの\nが多いゆえ、山崎は、生徒が独自でよい資料を探し出し豊富な資料を総合化して生徒\nなりの判断をしようとした努力や着想を評価した。停止した原子炉でたくさんの熱が\n発生するのはなぜかなど、質問もたくさん出ていた。\n 最後に、心理学分野の平和に関連する調査から一つ紹介する。やや古い報告である\nが、杉田明宏は、仙台市内大学生247名を対象に、SD尺度(核兵器・平和運動に対す\nる態度の感情的成分)、信念尺度(核兵器・平和運動に対する態度の認知的成分)、活\n動意欲尺度(平和運動に対する態度の行動的成分)などを5 件法で測定した11)。核兵\n器についての信念尺度の評定平均が高かったのは、\n・核兵器は他の兵器に比べて人体や自然環境におよぼす影響が著しく大きい。\n・アメリカの核兵器を日本に持ち込んでしまうと、かえって日本は(旧)ソ連の核攻\n撃の目標になる。\n・核兵器の製造競争は各国の経済を圧迫したり国民の不安を高めたりしている。\nの3 項目であった。\n・日本の安全はアメリカの核兵器によって守られている。\nは高くはないが低くもなかった。信念尺度の因子分析では、「核兵器」に関して、「核\n戦争の危機認識」、「核抑止論信仰」、「核兵器の破壊性認識」の3 因子が明示されてい\nる。\n 筆者が理科教員として、核抑止の世界の現実をどうとらえ学校の平和教育にどう結\nび付けていくか、というテーマにそった活動的学習を行うにあたり、上記の先行研究\n事例から読み取れた内容を整理すると次のような事柄になる。\n・世界的科学者レベルにおいて核廃絶と核抑止の意見対立の存在がある。\n・若い人は核戦争の危機や核兵器の破壊性を認識するも核抑止の現実をも見ていると\nいう示唆\n・ガルトゥングによる「積極的平和」という考え方は平和教育には重要な視点である。\n・授業では学習者が原発と核兵器の仕組みや放射性物質についての理解を深めるこ\nと。\n・授業で育むべきは現状の矛盾点を踏まえた具体的な意見を自分なりにまとめる論理\n的思考力。\n以上を参考に、次のような学習の見立てを3 つ持って実践に臨んだ。\na)学習者自らが問を立て、ガルトゥングの言うような「積極的平和」へと向かう。\nb)世界的な核抑止の現実を踏まえ学校教育でできることを考える。\nc)核の問題を身近に意識し自分の生き方とつないでいく。\n\n","subitem_description_language":"ja","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_3_publisher_7":{"attribute_name":"出版者","attribute_value_mlt":[{"subitem_publisher":"創価大学教育学部・教職大学院"}]},"item_3_source_id_10":{"attribute_name":"書誌レコードID","attribute_value_mlt":[{"subitem_source_identifier":"AA1238438X","subitem_source_identifier_type":"NCID"}]},"item_3_source_id_8":{"attribute_name":"ISSN","attribute_value_mlt":[{"subitem_source_identifier":"03855031","subitem_source_identifier_type":"PISSN"}]},"item_3_version_type_13":{"attribute_name":"著者版フラグ","attribute_value_mlt":[{"subitem_version_resource":"http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85","subitem_version_type":"VoR"}]},"item_creator":{"attribute_name":"著者","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"桐山, 信一","creatorNameLang":"ja"}],"nameIdentifiers":[{}]},{"creatorNames":[{"creatorName":"KIRIYAMA, Nobukazu","creatorNameLang":"en"}],"nameIdentifiers":[{}]}]},"item_files":{"attribute_name":"ファイル情報","attribute_type":"file","attribute_value_mlt":[{"accessrole":"open_date","date":[{"dateType":"Available","dateValue":"2021-03-29"}],"displaytype":"detail","filename":"kyoikugakuronsyu0_73_20.pdf","filesize":[{"value":"1.9 MB"}],"format":"application/pdf","licensetype":"license_11","mimetype":"application/pdf","url":{"label":"kyoikugakuronsyu0_73_20.pdf","url":"https://soka.repo.nii.ac.jp/record/40541/files/kyoikugakuronsyu0_73_20.pdf"},"version_id":"63ea3e39-20c5-4964-b7ca-c14cce4f3662"}]},"item_language":{"attribute_name":"言語","attribute_value_mlt":[{"subitem_language":"jpn"}]},"item_resource_type":{"attribute_name":"資源タイプ","attribute_value_mlt":[{"resourcetype":"departmental bulletin paper","resourceuri":"http://purl.org/coar/resource_type/c_6501"}]},"item_title":"福島原発事故の学びから核抑止の現実とこれからを考える -原発と核兵器の結びつきの理解を深める文科系学生対象の放射線教育実践-","item_titles":{"attribute_name":"タイトル","attribute_value_mlt":[{"subitem_title":"福島原発事故の学びから核抑止の現実とこれからを考える -原発と核兵器の結びつきの理解を深める文科系学生対象の放射線教育実践-","subitem_title_language":"ja"},{"subitem_title":"Radiation education practice for liberal arts students to deepen their understanding of the connection between nuclear power plants and nuclear weapons ―Thinking about the reality and future of nuclear deterrence in the world from learning about the Fukushima nuclear power plant accident―","subitem_title_language":"en"}]},"item_type_id":"3","owner":"14","path":["7873"],"pubdate":{"attribute_name":"PubDate","attribute_value":"2021-03-31"},"publish_date":"2021-03-31","publish_status":"0","recid":"40541","relation_version_is_last":true,"title":["福島原発事故の学びから核抑止の現実とこれからを考える -原発と核兵器の結びつきの理解を深める文科系学生対象の放射線教育実践-"],"weko_creator_id":"14","weko_shared_id":-1},"updated":"2024-02-22T06:08:32.111243+00:00"}