@article{oai:soka.repo.nii.ac.jp:00040525, author = {三津村, 正和 and 清水, 由朗 and MITSUMURA, Masakazu and SHIMIZU, Yoshiro}, issue = {73}, journal = {教育学論集}, month = {Mar}, note = {2019年2 月19日、日本のいじめ裁判史上、画期的な判決(大津地裁判決、一審)が 出された。2011年10月11日に滋賀県大津市内の中学校に通う男子生徒(当時、中学2 年生)が自死で亡くなったのは、同級生から受けたいじめが原因であるとして、被害 生徒の遺族が元同級生3 人と保護者らを相手取り、約3,850万円の損害賠償を求めた 訴訟に対するものである。西岡繁靖裁判長は、「元同級生2 人の暴行4 4 は孤立感、無価 値感、無力感、絶望感を男子生徒に抱かせた」として、いじめ行為と自殺との間の相 当因果関係を認め、元同級生2 人に3,758万円の支払いを命じた。原告として出廷し た被害生徒の父親は判決後の記者会見に臨み、提訴からの7 年に及ぶ法定闘争を振り 返っては、「まさかこのような判決が勝ち取れるとは思わなかった」と涙で声を震わ せながらインタビューに応じた(「教育新聞」2019年2 月20日付)。その後、2020年2 月27日の控訴審判決(大阪高裁)において、佐村浩之裁判長は一審判決と同様にいじ めと自殺の因果関係を認めたものの、一審判決を変更し、過失相殺を理由に約400万 円への賠償減額とした(「日本経済新聞」2020年2 月27日付)。それを不服とした被害 生徒の両親は、最高裁へ上告している(「毎日新聞」2020年3 月13日付)。  2013年6 月28日公布、同年9 月28日に施行された「いじめ防止対策推進法」(平成 25年法律第71号)は、上述のいじめ自死事件が契機となり、超党派による議員立法と して制定をみたことは周知の通りである。同法は計6 章35条の条文を有し、国・地方 公共団体・学校等に対し、それぞれの立場において基本方針の策定を図りながら、い じめの防止・早期発見・対処のための具体的な対策を講ずるように、詳細な責務を課 している。しかしながら、同法が施行された以降も、いじめの被害により児童生徒が 自死に追い込まれる事件は後を絶たない。また、学校におけるいじめの認知件数も右 肩上がりに増加し続け、文部科学省(2021)による最新の調査(令和元年度「児童生 徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」)では、前 年比6 万8,563件増の過去最多となる61万2,496件を記録するに至っている。  2018年には東京都八王子市内の中学校において、いじめの重大事件が発生した。被 害女子生徒(当時、中学2 年生)は、同年8 月28日にJR中央線西八王子駅で列車に 接触し、自死を図った。一命は取り止めたものの回復に至らず、同年9 月10日に亡く なった。その後、八王子市教育委員会は第三者委員会(「八王子市教育委員会いじめ 問題対策委員会調査部会」)を設置し、事件の概要を調査した。同調査部会が翌年8 月5 日に公表した「調査報告書」では、いじめの事実は認めたものの、いじめと自殺 との因果関係は否定した(「東京新聞」2019年8 月31日付)。遺族はその内容に不服を 申し立て、八王子市は2020年8 月12日に「いじめ問題調査委員会」を開き、再調査を 開始している(「東京新聞」2020年8 月13日付)。  文部科学省(当時、文部省)が全国的ないじめの実態調査に着手した1985年以降に 起こったいじめ自死事件は、中学校においてその被害が集中している。これは、中学 校に進学する以前の小学校(高学年)の段階において、来るべき環境の変化を見越し ながら、いじめ予防・対応への意識を着実に醸成しておくことの重要性を示唆してい る。また、2006年を境に顕著となるいじめの低年齢化をみても、小学校におけるいじ め予防の取り組みは、益々その必然性の度合いを増している。但し、それは従来のい じめ予防授業に散見されるような読み物教材を通して被害者の内面の苦痛を読み取ら せることに偏重し(早川、2017)、「いじめはダメ」「いじめはやめよう」という教師 の発言をもって授業を締め括るような在り方を肯定するものではない。「何故いじめ は許されないのか」「(いじめはどの学級でも起こり得るとの前提のもと、)いじめが 起こったらどのように行動すべきなのか」「いじめを起こさない学級を作るには、私 たちに何が求められるのか」といった問いを児童自らが探求し、いじめ予防を志向す る学級文化の共創に向けての課題や行動を議論するような授業を指す。本稿は、筆者 らがこうした問題意識のもとに着想し、設計・開発を行った「いじめ予防授業」の実 践をまとめ、その授業の効果を児童の振り返りの記述から分析し、また本稿の主題と なる演劇の潜在的な可能性とともに考察を加えることを目的とする。}, pages = {43--66}, title = {小学校高学年における彩色影絵劇を用いたいじめ予防の取り組み ―傍観者への問い掛けで終わる授業―}, year = {2021} }